ホワイトタイガー
私は夜に仕事があったので、その日は“お茶だけ”にするつもりで喫茶店へと入った。

純喫茶と呼ぶにふさわしい店内は、原発推進派なのかマスターがデブなのかのいずれかの理由で冷房が白い煙を吐き出しながら轟々と音を鳴らし、店内を冷やしていた。

店内に入るなりホワイトタイガーさんは「デブナイス!」と親指を立てながら大声を出していた。デブのマスターは苦笑いをしていた。

席に座るなりホワイトタイガーさんはコートをあっさりと脱いだ。
いや、逆じゃね? なんて思う暇すらあたえては、くれなかった。

コートの下は蛇皮柄のタンクトップ一枚で、肩の筋肉が異様に発達しており、両腕ともトライバルというのかな? コートと同じようなタイガーパターンのようではあるが、ギザギザしてなくて線がツルんとした刺青がいくつも入っていた。

おそらく全身なんだろうと思う。短く刈り込んだシルバーの丸坊主に透けてみえる頭皮にまで同様の模様が入っていた。

じろじろとみているとホワイトタイガーさんは「何? お腹とお尻は綺麗だよ」といって板チョコのように割れた腹筋をぺらりと見せた。

ホワイトタイガーさんは名前も年齢も住んでる場所も仕事も何も聞いてこなかった。

最初に煙草に火を付けたかと思えばいきなり「これなんだけどさ」と、たぶんバレンシアガかな? 高そうな黒い皮のボストンバックから一冊の大きな本を取り出した。

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