銀棺の一角獣
 戻ってきた時には、何事もなかったようにケイシーのいれたお茶を誉めて、バスケットに詰めてきた茶菓子を遠慮なく頬張る。

 アルティナはそんな彼の様子を眺めながら、静かにカップを口に運んでいた。


「そうそう」


 ふいにキーランが口を開く。


「君の部屋の警護は、ライディーアの騎士たちにも頼むことにしたから」


 驚いたアルティナが目を丸くしていると、笑いながら彼は続ける。


「最初の番は金の騎士だって――ゆっくり話をするといいよ」


 この人は――アルティナは言葉を失った。この人はなんておおらかなのだろう。一歩間違えれば、アルティナとルドヴィクは不貞の関係に陥りかねないのに。

 彼を裏切ることなんてできない。その事実をアルティナは痛感する。彼の信頼を裏切るのは――アルティナの瞳に涙が滲む。

 それを見たキーランは、あわててケイシーを呼んだのだった。
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