銀棺の一角獣
「代々の王が背負ってきた重荷をわたしが受け継ぐのだということをまざまざと知らされて怖かった、です」


 正直に話す。


「……アルティナ」


 テーブル越しにキーランは手を伸ばす。彼はアルティナの手を取ると、宥めるように叩いた。


「……父上には?」


 アルティナは視線を落としてしまった。ライオールに話をすることはできない。彼の目的を知ってしまった今は。


「一晩、考えます。どうしたらいいのか――どうすればいいのか、考えがまとまらなくて」


 二人の間に落ちた沈黙は重苦しい。それを破るように、ケイシーが部屋へと戻ってくる。


「神殿の茶葉の中でも一番いいものをもらってきましたよ! 神官さんたちが普段飲んでいる茶葉はとてもじゃないけど飲めたものじゃないんです。苦いだけで――苦いお茶を飲むのも修行なのかしら。一口いただいて、口が曲がるかと思いましたよ!」


 重苦しい雰囲気を吹き飛ばしてしまうような勢いで、ケイシーはしゃべり続ける。キーランが苦く笑っている間に、テーブルに茶器が並べられた。


「明日の朝には、出立するよ。今夜はよく休むことにしよう」


 キーランの言葉にアルティナは頷いた。
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