銀棺の一角獣
過去の因縁
 三人も乗せているとは思えないほど、「それ」は速かった。「追え」と命じたライオールの部下たちにもあっという間に引き離してしまう。

 そして疲れも見せずにずっと走り続けた。軽々と岩を飛び越え、小川も跳び越え、森の中へと駆け込む。

 あまりの早さにアルティナは目が回りそうになったのだけれど、必死に鬣をつかんでいた。振り落とされないように、両足で馬の身体を挟み込む。乗馬はあまり得意ではないし、鞍もつけていない馬の背は乗りにくかった。

 ようやくそれがとまったのは、森の奥深くに入ってから。綺麗な泉のすぐ側に立ち止まる。

 背にまたがったまま身動きすることもできないアルティナに、飛び降りたルドヴィクが手を差し出した。彼の腕の中に転がり落ちるようにして、アルティナは地上へと降りた。


「男を乗せる気はなかったのだがな」


 つまらなそうに鼻を鳴らした馬――一角獣は三人を残して泉の方へと進む。そして水の中に鼻をつっこんだ。
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