銀棺の一角獣
「キーラン様! お願い! 一緒に!」


 アルティナの鋭い声に、キーランは目を丸くした。それからルドヴィクの差し出した手に捕まる。アルティナも手を貸して、彼を一番後ろへと引きずり上げた。


「キーランを行かせるな!」


 混乱の中、ライオールの声だけがアルティナの耳にも届いた。目の前の鬣にしがみついたアルティナの腰周りにはルドヴィクの手がしっかりと巻き付いている。


「皆、逃げて! 逃げなさい! わたしの命じたことを成し遂げなさい!」


 残った騎士たちの耳に届けばいい。

 アルティナは、喉が裂けるのではないかと思うほど、何度も何度も叫んだ。

 どうか、無事に都に戻って。

 心の中でアルティナは繰り返す。その時には、アルティナたちは神殿から遠く離れていた。
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