銀棺の一角獣
 長い間同じ姿勢を強いられていた脚は言うことを聞いてくれなくて、アルティナはその場に座り込んでしまう。


「なぜ、僕まで?」


 遠慮するかのように、キーランは少し離れた場所に自分の席を決める。アルティナはまだ口をきくことができなくて、ただ首を左右に振った。


「……アルティナ」


 重ねて名を呼ばれて、アルティナは喪服を握りしめる。


「キーラン殿下」


 ルドヴィクは、そっと彼の傍らに膝をついた。


「アルティナ様はお疲れです。どうか今しばらく――」

「わかった」


 アルティナに投げかけるキーランの視線は切なさを帯びていて、アルティナは目を伏せる。

 そのままアルティナは立ち上がった。湖の方へと歩いていって、一角獣の隣にかがむ。手で水をすくって口に運んだ。澄んだ水は喉を潤してくれる。


「……話すわ」


 元の位置に戻ってから、アルティナはようやく話し始めた。
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