銀棺の一角獣
「ミラール隊長、かまいませんよね?」

「……そうだな」


 ルドヴィクはアルティナにはそれ以上かまわず、あっという間に話をまとめてしまう。先に行くと言い残して馬を走らせる彼をアルティナはただ見送った。

 兜をかぶっていないから、彼の編んだ髪が揺れるのも、先の赤い飾り紐が跳ねるのもよく見える。


「わたしは、そんなにわかりやすいのかしら……」


 落ち込んでつぶやくと、アルティナを背に乗せているティレルは大笑いした。


「わかりやすいし、あいつもずっと観察している。目を離すことなんてほとんどないぞ」

「……彼には苦労ばかりさせてしまって……」


 もっと早くに彼の手を離してあげるべきだったのかもしれない。アルティナを後悔の念が襲う。

 もっと早く。

 身分違いの恋であると自覚したあの日に、彼の手を払っていたら――きっと彼は今のようにアルティナに接することはなかっただろう。
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