銀棺の一角獣
「足を、痛めたの?」

「そんなはずないだろう。明るいうちにあいつを馬から下ろしたいだけだ」


 ルドヴィクの方へと顎を振って、ティレルはそのまま無言になる。アルティナは、唇を噛みしめることしかできなかった。

 自分はあまりにも無力だ。ルドヴィクにも、ティレルにも頼りっぱなしで。


「アルティナ、まずはお前が見張りをすると言え。明るいうちに攻めてくるやつらもいないだろうしな」

「……わかったわ」


 少しでもルドヴィクが休まるのなら――それくらいしかしてあげることができないから。

 ルドヴィクが決めた野営場所は、歩いていた道から少し離れた岩陰だった。近くには小さな川も流れていて、水をくむこともできる。


「ルドヴィク……今日はわたしが見張りをするわ」


 アルティナが言った。馬を木につないでいたルドヴィクが振り返る。


「アルティナ様が、ですか?」


「そうよ。まだ明るいもの。わたしとティレルで見張りをすれば大丈夫でしょう?」
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