銀棺の一角獣
「ですが――」


 渋る彼の肩に、アルティナは毛布をかけてやる。


「ちゃんと起きているから。日が沈むまでの間――少しだけでも、ちゃんと寝てちょうだい」


 馬具をつけたままのティレルは、足を痛めたはずなのに周囲をぐるぐると歩き回っていた。


「大丈夫だ。俺も見張りをする」


 重ねて言われ、かたじけないと頭を下げたルドヴィクは岩に背中を預けて目を閉じる。

 すぐに穏やかな寝息をたてはじめて、アルティナはそんな彼の隣に腰を下ろした。鳥の鳴く声が遠くから響いてくる以外は、ほとんど物音もない。

 顔をうつむけた彼の肩から編んだ髪が前へと落ちる。その髪の先に結ばれている紐は、半ば解けかかっていた。

 手を伸ばして直してやりたい誘惑にかられ――それを意志の力で押さえ込む。自由に彼に触れることができればよかったのに。

 彼の頭がわずかにアルティナの方に倒れ込む。自然に肩を貸す形になった。
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