銀棺の一角獣
 アルティナは目をぎゅっと閉じて心を落ち着ける。それから荷物を背負ったままのティレルの方へと向き直った。

 ティレルの鞍には旅の間の必需品を入れた袋と毛布がくくりつけられている。その中に清潔な布があったはずだと、アルティナは引きずり下ろした袋を開いた。

 中身を地面に散らかしながら、袋の奥を漁る。一番下から出てきた布を取り上げた。


「アルティナ様の見るようなものではありませんよ」


 傷口をきれいに洗って戻ってきたルドヴィクは、アルティナの視線から傷を隠そうとした。


「……その場所では、薬をぬるのは難しいでしょう? 薬をぬるくらいのことはできるから。それとも縫わなければならないの?」

「いえ、たいしたことはありませんから――では、薬をお願いできますか?」


 ルドヴィクはアルティナに背を向ける。アルティナは小さな容器にいれられた軟膏を指先にとった。
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