銀棺の一角獣
「持って行ったらいいよ」


 アルティナの髪を器用に編んだロープを腰の周りに巻き付けた妖精達が周囲を飛び回っている。白い衣の裾がひらひらと揺れていた。


「髪、ありがとう」

「ありがとう」


 銀色に輝くロープをしめして、妖精たちは笑う。


「これ、持って行っていいの?」


 アルティナは剣を妖精達の方に高く掲げて見せた。


「いいよ。ティレルがいないのなら、それだけあっても意味がないもん」


 湖に放り込むわけにもいかないだろう。アルティナは剣を胸の前に抱えて歩き始める。岸にたどりついたところで振り返ると、ティレルの亡骸はゆっくりと湖に沈んでいくところだった。

 胸に剣を抱えたまま、アルティナは洞窟へと戻っていく。ティレルと歩いてきた道をゆっくりと歩き始めた。

 ティレルと歩いてきた時より、洞窟の空気はひんやりしているように思えた。こぼれようとする涙を必死に制して、アルティナは足を進める。


「……アルティナ様! いったい――何が……」


 問いかけるルドヴィクには何も言えなかった。ただ、剣を抱きしめたまま彼の腕に倒れ込んだ。
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