銀棺の一角獣
剣とともに
 アルティナが抱えてきた剣に、彼はすばやく気づいたようだった。


「アルティナ様――何があったのですか? ティレル殿は?」


 次々に問われても、アルティナは何も返すことができない。ただ、涙を流してルドヴィクの胸にすがりついた。

 困ったように、彼の手がアルティナの髪を滑り、背中を撫で、こめかみに唇が押し当てられる。


「き――切った、の。ティレル、を……」


 要領をえない、アルティナの説明を彼は辛抱強く聞いてくれる。ようやく全てを語り終えた時には、完全に日が暮れていた。

 腰が抜けたように立てないでいるアルティナを気づかってくれたのだろう。ルドヴィクは彼女を炎の側に座らせたまま、何もさせようとはしなかった。

 森の中で見つけたらしい果物と、冷たい水がアルティナの前に差し出される。


「少しでもいいですから召し上がってください」


 そう言われても、食欲なんてなかった。
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