銀棺の一角獣
 水の入ったカップを手に、ただ座り込んでいるアルティナの前で、ルドヴィクは剣を抜いて眺めていた。


「本当にこれで、ティレル殿の首を?」

「ええ」


 アルティナはうなずいた。まだ、手に肉を切った時の感触が残っているような気がする。嫌な手ごたえだった。


「アルティナ様のお力で、馬――ティレル殿は馬とは違いますが――の首を一撃で落としたと?」

「そうよ」


 ちろちろと燃えるたき火の光でも、ありえないというようにルドヴィクが顔をしかめるのがわかった。


「……信じられない? わたしの言うことが……」

「いえ、そういうわけではないのです」


 ルドヴィクは、アルティナの隣に腰を下ろした。剣の刃に、自分の指を滑らせる。


「確かにこれはすばらしい剣です。よく切れることでしょう――ですが、簡単に馬一頭の首を落とせるかと言えば――わたしの力でも難しいと思います」

「でも、わたしは切ったの。本当よ。首が落ちるのを見たんだから」
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