銀棺の一角獣
 確かに手応えを感じた。ティレルの肉体が倒れるのを見た。彼が湖に沈んでいくのも。あれがなかったことと言われても信じることなんてできない。


「わかります。ですから、何かの力が働いたのではないでしょうか? ライディーア王家の者にしか彼を切ることはできないのでしょう?」

「……ええ、だからわたしを連れて行ったのだ、と」


 王家の者で、残っているのはアルティナ一人だった。アルティナの身に何かあれば、儀式を行うことはできなかっただろう。


「アルティナ様は、とても……頑張られたと思います。おそらくこの剣は、儀式の中でライディーア王家の者が握った時のみ、ティレル殿の首を落とすことができるのでしょう」

「……では、儀式は成功したと思う?」

「大成功ではないでしょうか。明日にはきっと、ティレル殿は元気な姿で戻ってくることでしょう」


 ほっとしたアルティナの目から、大粒の涙がこぼれ落ちる。
< 220 / 381 >

この作品をシェア

pagetop