銀棺の一角獣
「キーラン様」


 小さな声でアルティナは名前を呼びながら、彼の手をとった。少し熱があるようだ。


「……お帰り、アルティナ」


 うっすらと目を開いたキーランは、それでもアルティナに向かって微笑みかけた。


「ただいま戻りました」


 アルティナも必死に笑顔を作って、キーランの目をのぞき込む。


「大変……でしたのね?」

「それほどでもないよ」


 小さく笑って、キーランはアルティナの髪へと手を伸ばした。愛おしむように、彼女の銀の髪を撫でる。


「君も、大変だったね。ずいぶんやつれてる」

「そうでもありませんわ。キーラン様ほどではありませんもの」


 たしかに旅は過酷だったけれど、皆が守ってくれたから、アルティナはそれほど大変だとは感じなかった。

 その間、キーラン一人、ここに残って戦っていたのだから。


「アルティナ」


 キーランはそっとアルティナの手を自分の唇に寄せる。ごくわずかに唇に触れさせると、手を離した。
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