銀棺の一角獣
「キーランはよくやってくれたようだな」

「――命をかけて――くださいました」


 神官長は、神官着の胸元に手を当てて一礼する。それから、アルティナの方へと視線を向けた。


「……キーラン様は……」


 アルティナは床から目を上げることができなかった。


「キーラン様は……大変衰弱していらっしゃるわ。できることなら、ゆっくりと休養をとっていただきたいの」


 床を見つめたまま言うと、かすかに衣擦れの音がする。


「かしこまりました。そのように手配いたしましょう――よろしいですかな、ティレル様」

「……かまわん。キーランはずいぶんよくやってくれた。彼の力がなかったら、俺たちが都に近づいた時点でライオールに気づかれていたはずだ」


 ティレルはアルティナとルドヴィクの顔を交互に眺めた。


「ライオールは一回国元に戻ったが、今再びこちらに向かおうとしている。明日には到着するだろう」


 ライオールが到着したら――その時には。アルティナは唇を噛む。最後の時が近づこうとしていた。
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