銀棺の一角獣
「全てがわかるわけではないがな、あいつの気配ならわかるさ。どれほど時がたとうとも、距離があろうとも」


 どれほど目をこらしてみても、アルティナの目にはわからない。どこにライオールが到着しているのか。

 張られた天幕の中に一際立派な物があるから、きっとそこが彼の天幕なのだろうということは予想がつくけれど。


「名前――」

「名前?」


 ティレルの注意が、敵陣からアルティナの方へと向く。


「その、名前はないの? ずっとライオールとあなたは呼んでいるけれど……その、本当の名前は別にあるのでしょう? 妖精達の王だったころの名前が」

「……ないな」


 珍しくティレルの瞳が憂いを帯びる。アルティナは悪いことを口にしたのではないかと思った。

「あのね、無理に話してほしいとは思わないの。ただ――」
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