銀棺の一角獣
「アルティナ様、よろしいでしょうか?」


 ジャファールの声に、扉を開けるように侍女を促した。開いた扉から入ってきたのは、神官長のジャファールだけではなかった。若い神官の肩を借りながら、キーランも続く。


「キーラン様! どうしてこのようなところに? まだ起きてはいけないのでしょう?」


 口早に切り出しながらも、アルティナは気づいていた。キーランが身につけているのは、ジャファールと同じ神官の正装だ。黒のゆったりとした長衣に、金糸と銀糸で刺繍が施されている。

 腰のベルトには一角獣の彫刻が施された銀の飾りがつけられていた。その上から、同じように金糸と銀糸で刺繍を施された黒のマントを羽織っている。

 本来なら、キーランは身につけることを許されない装束だった。それはジャファールにのみ許された格好。
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