銀棺の一角獣
「……アルティナ」


 輿から下りたキーランが、二人の神官に支えられてアルティナのところへと歩み寄ってきた。


「キーラン様。敷物を用意しましょう」


 アルティナは表情を変えた。キーランの前で不安そうな顔はしたくなかった。彼にはできるだけ快適に過ごしてもらいたい。この状況の中で――できるだけ。


「ありがとう。もう、いいよ」


 敷物が用意されて、キーランはそこに座り込む。アルティナはその横に膝をついた。


「お身体の具合は?」

「大丈夫。昨日一日休ませてもらったからね」


 キーランも微笑みを作る。その顔は穏やかなものだった。彼の側に膝をついたアルティナの肩に自分の頭をもたれさせる。


「戦況は?」

「……残念ながら、こちらが不利なようですわ」


 ディレイニー軍は数が多い。ライディーア軍の騎士たちは倒れても倒れても前方へと進もうとし――けれど、ディレイニー軍はあまりにも強大で――騎士たちが倒れていく様にアルティナは目を閉じる。
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