銀棺の一角獣
 自分の肩に載せられたキーランの頭にアルティナは手を添えた。彼の柔らかな金髪に指を通し、髪に口づける。少しでいい。彼に安堵してほしかった。


「キーラン様……」


 アルティナは彼の名を呼んで、彼が心穏やかでいられるようにと願う。この場に居合わせる異国人は彼一人だけれど、彼はアルティナたちのために全てを捧げてくれた。

 これに負ければ全てを失うのは彼も同じ。


「アルティナ」


 ティレルが立ち上がった。


「――ライオールの注意を引きつけなくては――俺が行く」

「……不利すぎるものね……」


 アルティナは小さな声で言うと、ティレルに頷いてみせた。


「お願い――行って」

「だめだよ、アルティナ。ティレルにはここに残ってもらわなきゃ」


 アルティナの肩からキーランが顔を上げる。アルティナはそんなキーランに微笑みかけてみせた。
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