銀棺の一角獣
 きっとアルティナ自身も混乱しているのだろう。何か忘れているような気がして落ち着かない。広間の中をぐるぐると歩き回っている。


「大丈夫ですよ、アルティナ様。何か足りなければ、すぐにご命令ください。騎士団の者を室内に置いておきますから――わたしも同席いたします」


 アルティナは息をついた。デインが同席してくれるというのなら心強い。先方の要望で、急遽会談をもうけることにはしたけれど、ライオールと何を話すべきなのかまだ見えていないのだから。


「ティレルは?」

「入浴を――美人をつけろというので、若い侍女を二人おつけしました」


 この状況で入浴するというティレルにアルティナの肩が落ちる。

 終わったとたん緊張感のかけらもない――とはいえ、彼は汚れてしまっていたというのもまた事実だった。美人をつけるかどうかというのは別として。
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