銀棺の一角獣
「頼みがあるんだけど……いい?」

「もちろんです。わたしにできることがあれば何でもしますから」


 アルティナはキーランの手から自分の手を抜こうとは思わなかった。彼の指に手をゆだねるのは不快ではない。

 キーランの緑の瞳は穏やかにアルティナを見つめている。耐えきれなくなって、アルティナは視線を落とした。

 空色の瞳に見つめられた時は、もっとどきどきして自分がなくなるのではないかと思った。


「結婚のことなんだけど」

「ええ」


 アルティナはうなずく。進めることに異存はなかった。

 こんな状況であるから、式はごく質素に。国内の貴族と、ディレイニー国周辺の貴族を何人か参加させて、簡単にすませるつもりだった。

 婚礼用の衣装も、仰々しくするつもりはない。王宮内の倉庫には母が結婚した時の婚礼衣装がまだ残っていたはずで、それを使えばかなり節約できるだろう。
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