銀棺の一角獣
 アルティナはそんな風に考えていたのに、キーランは違っていたようだった。


「婚約を破棄しようって言ったら、アルティナはどうする?」

「やめるって……」


 アルティナは困惑した目でキーランを見る。


「……何かありましたか?」

「君が誰を愛してるのかなんて知っている。それでもいいと思っていたけれど……」


 キーランの目尻が下がって、情けなさそうな表情になる。


「今は状況が変わったんだ。父が婚約を押しつけたあの時とはね」

「……そんなこと……」


 アルティナは顔を伏せてしまう。キーランがアルティナの本当の気持ちを知っているのは当たり前だ。彼にはかくそうとはしなかった。彼もそれでいいと言ってくれてはいたけれど――。
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