銀棺の一角獣
「できるだけ長くいてちょうだい」


 父も兄もいなくなった。キーランももうすぐこの国を去る。アルティナの周囲には誰もいなくなってしまって――だから、アルティナは寂しさを感じないわけにはいかなかった。


「そうだな。おまえが跡継ぎをもうけるくらいまではこの国にいようか」


 ティレルはアルティナの手に額を押しつける。アルティナは彼の額に生えた角を優しい手つきで撫でた。


「それより、いいのか? ルドヴィクを行かせてしまって」

「いいの。彼が迎えに行くのが一番いいでしょう?」


 今はルドヴィクの顔を見ることができなかった。キーランがいなくなったからといって、いそいそとルドヴィクの胸に飛び込むなんてできるはずがない。自分が彼に強いた犠牲の大きさを考えればなおさら。

「はん、人間というのはつまらないな。自分が思うようにすればいいのに」
< 309 / 381 >

この作品をシェア

pagetop