銀棺の一角獣
 アルティナは室内を見回す。石造りの壁は寒々としていた。はるか上の方にごく小さな窓が開いていて、そこから入ってくる光だけが光源だ。

 扉は頑丈な鉄製で、小さな穴が数カ所に開いている。上部の穴は室内の確認用、下部の穴は食事やその他のものの差し入れ用なのだろう。

 護衛の騎士たちはどうなったのだろう。不安に胸が締めつけられる。

 何より心配だったのは、ルドヴィクのことだった。ライオールに剣を向けた以上、無事でいるはずがない。何とか逃げ延びていてくれればいいのだけれど。

 あれからどれくらい時間がたったのかわからない。

 食欲も、喉の渇きも覚えていないところからすると長いことたったというわけでもなさそうだけれど。

 宝飾品はそのまま身につけていた。これだってアルティナの国では代々伝えてきた大切な宝だ。棺の中の一角獣にこだわって、これらの宝飾品を放置するその理由がわからない。
< 54 / 381 >

この作品をシェア

pagetop