銀棺の一角獣
 静かにアルティナは涙を流す。兄がいなくなって、父がいなくなって、涙なんて枯れてしまったと思っていたのに。


「……わたしはなぜここに閉じこめられているのですか?」


 あふれる涙を手で払い落として、アルティナはたずねた。


「……父が、そう命じたから。君にやらせたいことがあるらしい」

「そう、ですか……」


 扉にもたれかかったままアルティナはつぶやく。連れてこなければよかった。国境で全員帰して、ディレイニー王国の騎士たちに護衛をまかせればよかった。


「あなたのお父上は、わたしに何をさせたいのでしょう? ……ひょっとして一角獣に関して何かあるのですか?」

「たぶん」


 床から立ち上がることはできなかった。一角獣についてアルティナが知っていることといえば棺の中におさめられていたということくらい。
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