銀棺の一角獣
「一角獣は、我々の神殿におります」

「……なぜ?」


 アルティナは首をかしげた。


「我々の神殿は、古来より傷ついた一角獣が傷を癒すために訪れたという泉の側に建てられています」

「……そんな伝説の残る泉なんて各地にあるのに」

「……そうですね」


 カレンの微笑みは、神職にあるのにふさわしい穏やかなものだった。信じていないというアルティナの表情にも、顔色一つ変えることはない。


「アルティナ様――我々はあなたにお詫びをしなければなりません」

「お詫び?」


 わびられなければならない理由がわからなくて、アルティナはもういちど首をかしげた。


「本来ならば、もっと早くお伺いしなければならなかったのです。代々の国王にのみ伝えなければならない伝承を我々が預かっているのですから」

「……一角獣に関してと言うこと?」


 ゆっくりとカレンはうなずく。それから重々しい声音で彼は続けた。


「今回のアルティナ様のご即位はあまりにも急なものでしたから――ご出立に間に合わず申し訳ありませんでした」

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