銀棺の一角獣
「なぜ、できぬのだ? できぬというのなら――神殿に攻め込んで直接聞いてやろうか」


「ライオール陛下」


 アルティナは優雅な仕草で頭を垂れる。ライオールを説得できるか否かはアルティナ一人にかかっていた。ここでは誰も頼ることができない。ルドヴィクも、キーランも。

「神官たちは恐れているのです。一角獣がよみがえったという話は彼らに伝わっているようですから――掟を破ればどうなることか」


 実物が現れたのでは一角獣の存在も、復活も、信じないわけにはいかないだろう。


「伝承を受け取ることができるのは王のみです。彼らはわたし以外には話をしないでしょう」


 なんとかライオールを説得しなければ。アルティナは必死に言葉を探す。


「わざわざ兵を出すこともないでしょう。わたしを神殿に行かせていただけませんか? そこで聞いた伝承は――全てライオール様にお話しするとお約束します」

「それを信じよと言うのか?」

「わたしはキーラン様の婚約者です。できるだけのことをするとお約束いたします」


 信用してくれればいい。そう願いながら、アルティナは婉然と微笑んで見せた。
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