銀棺の一角獣
フォークレーア神殿へ
「婚約者、か」


 執務机の上に頬杖をついて、ライオールはアルティナを見上げた。


「アルティナ殿にとっては、望みもしない押しつけられた相手ではないか。国元には恋人がいるという話を聞いているぞ?」


 この男はどこまで知っているのだろう。アルティナは不安のまなざしでライオールを見つめる。頬杖をついたまま、ライオールはアルティナが返すを待っていた。


「……確かに」


 どうあがいても、この男にはかなわない。アルティナは話しながらそれを自覚する。

 ライオールとは君主として国を背負った年月が違いすぎる。それ以前にアルティナはそれほど熱心に君主としての勉学を行ってきたわけでもなかった。

 圧倒的に経験値が違いすぎで、何をしても勝てる気はしない。
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