サファイヤアンドロイドの夢
「もう2時間もおまえのやり方を試したんだろう?充分だ。」


吐き捨てるように私はそう言うと、男を運ばせた車に乗り込んだ。
たぶん敬礼で見送っているであろうオルクスを無視し、本部でも選りすぐりの医療用アンドロイドを召集させた。

車が本部に着く頃には、万全の準備が整っているはずだ。
車を自動操縦にし、男の様子を見る。
後部座席を血に染めている男は、起きているのか、眠っているのかすらもわからなかった。
ただ、時折苦しそうに息を吐き、車が揺れると呻いた。
傷口から黴菌でも入ったのか、身体が熱い。
確かに酷い拷問だったのだろう。
それでも口を割らなかったのだ。
だとしたら、本当に記憶喪失か、
相当に訓練を受けたプロのスパイのどちらかだ。

私は、車のスピードを上げ、帰途を急いだ。
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