お見合い相手は変態でした
そんな矢先、マーガレットの見合い話が、ハーヴェス子爵家に持ち込まれた。



相手はハーヴェスより格上の家柄で、次期侯爵の地位を継ぐロベルト・キース。
夜会でのマーガレットの美しい所作や立ち振る舞いに、ロベルトの父親が、ぜひ自分の息子の相手にとハーヴェス子爵に声をかけてきたらしい。
だがその見合い相手にはよからぬ噂が多々あり、マーガレットの相手にはふさわしくないとエルザは考えていた。


「女遊びが激しい男をマーガレット様のお相手になんて!どうせ、女遊びが激しくてなかなか結婚相手を決めないから、マーガレット様と結婚させることで、侯爵はそれを止めさせるつもりなんです!マーガレット様は被害者です!許せません!」



腹立たしい思いを昇華できず、櫛をもつ手に自然と力が入る。顔も知らぬ見合い相手を頭の中で思い浮かべ、石のつぶてをぶつける想像をすることで、なんとか正気を保てていた。



「エルザ、噂を鵜呑みにしてはいけないわ。良い人かもしれませんよ。」

「マーガレット様………。」



マーガレットにそうたしなめられては、言葉を慎むしかない。



ロベルトはマーガレットの想い人のウィリアム同様に、地位も良く相貌も良い。だが女性にモテる分、女遊びが激しいという点が、ロベルトの評価を著しく下げているらしかった。
見た目にはマーガレットは気丈に振る舞っているように見えたが、不安が拭えないのかその表情はやはりいつもより優れない。



「マーガレット様、私はいつもマーガレット様の味方です。何も出来ませんが…。」
「ありがとう、エルザ。その気持ちだけで嬉しいわ。」



エルザはドレッサーに櫛を置くと、勇気づけるようにしっかりと、マーガレットの手を両手で包み、ぎゅっと握りしめた。
それを受けて、マーガレットはエルザに心配をかけないよう、優しく微笑みかけた。



その時、廊下を誰かが歩く音が聞こえ、その音がマーガレットの部屋の前で止まった。共に、部屋の扉がノックされる。慌ててエルザはマーガレットから手を離した。



「失礼いたします。マーガレット様、旦那様が応接間でお呼びです。ロベルト様がいらっしゃいました。」
「わかりました。只今参ります。」
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