砂漠の水車



「――…あ、お待ちください」



レインが前を行くジンの裾を掴んだ。


無言をもって応える彼は、背後の暗闇をじっと見つめて、ある一点に集中を絞っている彼女を邪魔しまいと言葉を待った。


命と頭を扱う仕事にとって、仲間のために沈黙を守るにも一種の才がいるものだ。


沈黙を守るか、助言を試みるか。




「…………」



レインは、黒に沈んだ道の向こうをじっと見つめている。


時折ぴくりと動く四肢が犬のよう。


鼻がきちんと機能する賢い子。




そしてやがては、深いため息をついて少し緩んだ表情でジンに向き直った。



「失礼しました、私の勘違いのようです」


「…そうか、珍しいな」


「ええ、少し緊張しているようです」



本当に困ったような顔をして、レインは右耳の朶を弄った。



「――行くぞ」


代わって無表情な号令を述べ、再びジンは道を進んだ。



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