砂漠の水車
巨漢と小男をとにかく視界から遠ざけたくて、ジンは砂煙が晴れて見晴らしが妙によくなったことに気付いた。
――…建物が無くなっている。
いや、崩れたらしい。
道を囲っていた建物の煉瓦は上空から真横から真っ二つに割られ、バラバラになった煉瓦は辺り一面に散乱している。
雲が無く、月光が心地よい夜だった。
「おめぇら運がええな。
俺の剣まどもにうげだらおだぶづだっつのによ、あだりどころが悪がったのが?」
「勘のいい若者ですねェ」
小男が喋った。
全体的にトーンが高く、頻繁に裏返る声がなんとも耳障りで、尖った顎に眼球飛び出した爬虫類な目が気味悪い。
「軍の馬鹿どもは大抵引っ掛かってくれるんですが…ふん、若いからと甘く見てしまったようですヨ」
「ゲゲゲ、心配いらねぇよ、どうせ二人どもごごでバイバイだがらよう」
犬のように、巨漢は厚い唇をなめた。
吐き気っ、吐き気がっ。
「おめでたい方々だ」
「まったくだな。
暗殺専門家と軍の荒くれものを一緒にしないでいただきたい」
軍の人間は嫌いじゃないが、頭が固いので好きでもない。