砂漠の水車
「少し様子を見てきます。
ひっつんは、ここで待っていてください」
「いや待て」
走りだそうとするその肩を掴んで、ヒツギは「俺が行く」と言った。
「君は――…」
「慎重さに欠けるとか言うんだろ、でもお前ふらふらじゃねえか」
今だって、アルファの足元は小刻みに震えており、歩ける足とは思えないほど。
それを無理矢理動かす気力を根性とかいうが、どうにも人は根性の使いどころをよく間違えるらしい。
慎重さに欠けるは重々承知の上だが、いざ、を考えれば確実にヒツギが出向く方が危険が少ない。
「…僕の許可無しに暴れないこと」
「けっ、なんで俺ばっかり肩身が狭いんだか」
ヒツギは表情の曇ったアルファを押し退けて、先に見える鉄柵の門へ忍び足で近づいた。
常時欠かさないという、自ら編んだわらじは非常に柔らかく、砂の音をたてない。
回りには沿って歩いてきた高い石壁だけで、木々はなければ建物もなく、ただ地平線の彼方で藍と横道が一線をわけている、寂しい景色にあった。
隠れる何かはない。
注意を配ろうとすれば石壁くらいか。
突然パカリと開いて銃殺なんてされたら堪らない。