砂漠の水車
鉄柵の向こうには、煉瓦がさらに積み上げられた暗い通路が続いている。
天井の高さは、ヒツギの頭より少し上くらいにあるから、約2メートル。
薄暗いのは確かだが、等間隔にランプが吊るされているので燃えるような煉瓦の色がかなり鮮明に認識できる。
ただしランプの光が届かない場所は、抜け落ちたかのように真っ黒だ。
――…見張りらしき気配は、無いようだ。
ヒツギは目配せと手振りでアルファを呼ぶ。
「誰もいませんね」
キョロキョロと辺りを見回して自らも安全を確認するアルファ。
見張りがいそうなスペースもない、門の奥にも特に物音はしないし進んでも問題なかろう。
「おいアル、おぶされ」
「は?」
ヒツギは言い直す前に軽く舌を打ち、黙ってアルファの細い体躯を肩に背負った。
軽く悲鳴をたてて運ばれる。
肩に青年を担いだヒツギは、鉄柵に足を掛けると軽々とをれを蹴って高い壁を登りあげた。
「馬鹿力っ!!」
「うっせーな、この方がはええだろ」
それより静かにしろよと一喝してヒツギは登った鉄柵から飛び降りた。