アカイトリ
颯太が感情のままに指や唇で天花の身体を愛したために、天花は息も絶え絶えになり、浴衣を全て脱がされ、颯太自らの手で新たな浴衣を着せられる。


「天花、お前には…まだ刺激が強すぎたかな」


本当は、全力で愛したい。

制限を許さず、天花の全身を愛して、心を全て搦め捕り、俺に溺れさせたい…


制限してしまうのは、無理強いをしたくないからだ。

受け入れてもらうにはまだ、時間がかかる。


だが俺には、時間が限られている――…


――ぐったりして半ば気絶状態の白い身体を抱き上げると、耳元でわざと低く囁いた。


「あんなことで気絶されては困る。俺はもっとすごいことをするつもりだからな」


「やめ、ろ…っ」


びくんと跳ねる身体。

最近、必要以上に天花は感じすぎている。

最後まで至れないことが、互いに苦痛になってきている――


それでも、触りたい。

心を求めて、命を燃やしたい。


――颯太は天花を部屋へ運び、寝かしつけると、縁側を歩いて自室へ戻ろうとした。


が、門番が小走りにこちらへ駆けてくる。


「どうした?」


「は、はいご主人様…菖蒲(あやめ)様がお見えで…」


…菖蒲。

天花を捕らえる前に口説き落とした若き未亡人。


「部屋へ通せ」


命令を聞き、走り去る門番を見送りつつ部屋へ入って座椅子にゆっくりと腰かけた。


「何しに来たんだ…?」


一時は寵愛したが、天花が現れたことにより、菖蒲の屋敷には通ってはいない。


すらり、と障子が開き、長い髪を高く結い上げた菖蒲が頭を下げた。


「颯太様…お久しぶりですわ」


「ああ、菖蒲。久々だな。入れ」


真っ赤な着物に、紅を引いた真っ赤な唇。

妖艶な身体と目つきが魅力的な女だった。


「近頃お呼びがかからず淋しい思いをしておりましたわ」


「んん、最近面白いものを拾ってな。それに夢中なんだ」


菖蒲は部屋の香りを大きく吸い込んだ。


「颯太様…香りがまた増しましたわね。菖蒲はまた、その香りに酔いたいですわ」


…誘われている…。


断ろうとした時、菖蒲が膝に乗ってきた。


「他の女を思うならご自由に。わたくしはあなたを抱きに来ましたのよ…」


妖艶に、微笑んだ。
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