アカイトリ
「俺は一体…」


「大丈夫か颯太?長いこと呼びかけても返答がないから心配したぞ」


はらはらした表情で凪が颯太の肩を掴んだ。

颯太は傍で今にも泣きそうな表情を見せている天花の頬に触れた。


「天花…見たか?」


「神…の姿が見えた。碧も居た…」


少し離れた場所で隼人が目を見張る。


「いや違う、その先だ」


「その先…?わたしが見たのは大洪水が起きる出来事までだ。そうか…ではあれを見たのは俺だけ…」


深く考えこんでしまった颯太の肩を隼人が抱くと、出入り口まで導いた。


「お前は違うものも見たようだな。少しずつでいい。話せ」


「ああ…。親父殿、すまん」


「お前はさっきから謝ってばかりだな」


苦笑する父を前に、凪は天花に問いかけた。


「何を見た?」


「…あれは多分楽園だ。そこで神と碧い鳥が仲睦まじい様子で共に居た。それよりも…神と颯太の顔が全く同じだった…」


「…そうか。俺の親父も同じことを言っていた」


「?それはどういう…」


「後で話す。今は颯太の話が先だぜ」


そして再び先程の部屋へ。

今度は疾風と楓も同席していた。


なおも表情の冴えない颯太を気にかけ、天花もまた表情が曇る。

それにようやく気付いた颯太が、やんわりと手を握った。


「では、さっき俺が見たものを話す」


時間をかけて思い出しながら颯太は語った。


語るにつれ、みるみる天花たちの表情が曇ってゆく。


「人間…だと?」


凪の引き攣った声に、颯太は浅く頷いた。


「神の剣の製法を知る者らしい。神の代行者といったところか」


「そいつがお前の命を狙うだと?冗談じゃねえよ、俺がぶった斬ってやる!」


激昂する凪に対して、颯太が苦笑して茶を口に運んだ。


「お前だって同じだったろうが」


「今はちげーよ!それになんだよお前は!なんでのほほんとしてんだよ!」


しばらく颯太は俯いた後、凪たちに笑いかけた。


「大丈夫だ。凪の時は不意打ちだったが、今度は違う。というよりも、その人間ともわかり合いたい」


――敵と味方の定義のない颯太。


凪は呟いた。


「ぜってー倒す…」


天花は呟いた。


「死なせない。守り抜く」


颯太はただ微笑んでいた。
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