アカイトリ
黙っていた隼人が、隣に座る颯太を長い間見つめた。


――幼い頃から利発に富み、この世界において金の髪を有する人間はおらず、妻と二人で守り抜こうと決めた。

その妻は颯太が生まれて数年後に他界したが、隼人は碧い鳥の遺した遺言を囁く。


「金の髪の子が我が家系から生まれた時、終焉を迎えるだろう」


自分を見つめながら言った隼人のややつらそうな顔を見て颯太は首を傾げる。


「親父殿…何だそれは…?」


聞いたことがない。

そのような文献も読んだことがない。


息を呑む全員を前に、机の引き出しから古めかしい一冊の文書を颯太に差し出した。


「お前宛てに碧が遺した文書だ」


「俺宛て?」


数千年を経て、碧い鳥の葵から颯太に渡った秘密の文書…


それは何重もの封印を施されており、隼人もその内容は見たことがない。


「金の髪の子が生まれた時、この文書を渡すように言い遺されている。颯太、お前が生まれてくることを碧い鳥は待って待って、待ち続けたのだ」


――絶句してただ隼人を見つめるばかりの颯太の手を天花が強く握った。


「その話なら、親父に聞いたことがある」


黙していた凪が隻眼の右目を光らせた。

腕を組んでただ畳に視線を落とした。


「神の鳥が全て地に墜とされた時、親父は憎悪に燃えて碧い鳥の居所を突き止めたそうだ」


天花が目を見張った。

碧と黒はこの地上で出会っていたのだ。


自分は誰にも出会えずにいたというのに。


巡る今までの苦痛。


――あくまで淡々と凪は語る。

父から聞かされた神と瓜ふたつの颯太を見ながら。


「会った時、すでに碧い鳥は孕んでいた。人の子を」


須王と葵との間に授かった、“どちらともである”子を。


「親父は碧い鳥の喜びに満ちた姿を見て殺せなかったそうだ。どうしても、できなかったと」


黒い鳥に僅かに残った良心。


父の染め上げられた漆黒の魂をいとも簡単に純白に染め直した颯太。


「親父が碧い鳥を殺さなくて良かった。でなければ、お前と出会うことはできなかった」


深く深く、はじめて父に感謝する凪。

隼人は颯太を強く抱きしめた。


「親より早く死ぬなど親不孝なことはしてくれるな。方法を必ず見つけてやる」


強く抱き返した。
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