シスター
部屋


カチャ、キィー…


「お姉ちゃん?」


食事を終え、早く自分の部屋が欲しかった美佳子は2階へ駆け上がった。

が、不調で寝てるかも知れない姉を起こさないように静かに部屋へ入って行く。


1つ目の部屋…にはいないみたいだ。

2つ目の部屋…


「お姉ちゃん?」


カチャ、キィー…


電気はついてないけど月明かりで部屋の中は見える。
姉はいないみたいだ。

残りは3つ目の部屋。


幸い、廊下には電気が付いてる。

そうじゃなきゃこんな薄暗くて不気味な廊下、1人じゃ歩けない。




「美佳子」


「きゃあっ!」




僅かな恐怖感で身をすくめている最中、背後から聞こえた声。

驚き振り返るとそこにいたのは




「お姉ちゃん…びっくりしたじゃん」


姉の恭子だ。


いつの間に後ろに?

っていうか、気配すら感じなかったんだけど。


「ごめんね。トイレに行ってたの。晩ご飯食べた?ん?」




姉は、今私が入ろうとしてた3つ目の部屋で寝ていたらしい。

中に入ると…

もうすでにベッドや家具がキチンと片付き位置付けられていた。

「お姉ちゃん、調子悪いって言ってたのに、片付けなんてして平気だったの?」


っていうか、この短時間のうちにベッドは疎か箪笥まで綺麗に並べられてる。


「平気よ。だってベッドを出さなきゃ眠れないじゃない」


ベッドにはちゃんと布団も引いてある。

昔から姉が愛用している薄いピンクの羽毛布団。

こんなに綺麗に片付いてるのだからここは姉の部屋として決定だ。

姉がベッドに腰掛けたので後を追うように美佳子もベッドに座った。


さっきまでの不信感や恐怖を振り払うように姉の腕にしがみつきながら。

「どうしたの?甘えん坊さんなんだから」

「…私、今日はお姉ちゃんと寝る」


さっきまで姉と一緒に部屋割りについて話すつもりだったのに。


「仕方ないわね」

何て言いつつ甘えて来る妹が可愛く感じたのか、その声はとても穏やかなものだった。

美佳子のさっきまでの恐怖心を払うには充分なほど。
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