シスター
美佳子はあるものを見つけた。
ベッド脇に置かれた棚、そこに置かれた指輪ケースと写真立て。
けれど写真立ては見えないようにうつ伏せに倒されてる。
それに、あの指輪ケースって…
ドラマとかでしか見たことないけど恋人へのプレゼントに使われてる代物だよね。
妹の視線に気づいた姉が妹の頭を撫でながら話し出した。
「あれはね、お姉ちゃんの大切な人がくれたものなの。写真にはその大切な人が写ってるの」
やっぱりそうなんだ。
お姉ちゃんに恋人がいたなんて初めて知った。
お姉ちゃんは綺麗だから恋人がいても可笑しくないけど
「どうして写真隠してるの?」
「ん、もう会えないからね」
そっか…
きっと引っ越しちゃうから別れちゃったんだ。
ここと東京じゃ離れ過ぎてるもん。
「あの指輪もね、貰ったのはいいけど無くすのが怖くて、勿体無くて1度も付けないまま。よく喧嘩した。結婚式の時に結婚指輪と一緒に付けたかったから」
お姉ちゃん…
どんなに愛し合ってても越えられない壁があるんだなと思った。
私はお姉ちゃんと違ってまだ子供だから。
「だったら“行くな!俺と結婚してくれ!”ぐらい言えばよかったのにね!」
「あははは!確かにそうね!」
大丈夫、お姉ちゃんは強くて逞しくて私の理想の人だもん。
また素敵な恋をするんだろうな、きっと。
「そろそろ寝ましょ。電気切るわよ」
「うん」
姉の横で体を丸めて、姉がいる安心感と長旅の疲れとで思ったより早く睡魔はやって来た。
けど、明日から1人で眠らなきゃならないのかな?
今日はお姉ちゃんがいるから眠れそうだけど
明日から眠れるのかな。