蠱惑な、異名。
このまま駆け寄って、抱きつきたい衝動に駆られた。
抱きついて、今すぐにでもこの場所で、あなたのあの指で人目も憚らずもう一度逝きたいと思った。
唇を舌先を想いを全て絡めて。
ひとつになりたいと願った。
短冊に書いて叶うなら、百枚でも千枚でも書きたいと思った。
私はくるりと背を向けて、そしてもう一度ゆっくりと振り返る。
そして自分でも今までの中で一番美しいと思う微笑みで、あの人に会釈をして歩き出す。
あの人が渡ってくる場所と反対岸へ。
水面を大きな風が吹き抜けて、薄地の袖がはためく。
それはまるで笹の葉と揺れる一枚の短冊のように。