週末の薬指
突然訪ねてきた私を、まるで獲物を捕らえたかのように必死に抱いてくれた夏弥は、愛し合った余韻に浸りながら
『あー、一緒に沖縄に連れていきたい。……無理だよな?』
半分本気、半分冗談。
どちらともとりかねる口調で私を見下ろした。ベッドに私を押し付けて、私が『一緒に行く』と言わない限り自由はないとでもいうような視線を落としたけれど、『無理だね』残念だけど、と添えて夏弥の頬を撫でた。
状況が許してくれるのなら、一緒に沖縄について行きたいけど、私の中にある仕事をないがしろにできない真面目な気持ちが邪魔をして素直になれない。
『行けたらいいのにな』
そう呟くのが精いっぱいで、残念そうに顔を歪める夏弥を喜ばせることはできなかった。
仕事って、ここまで私を縛るものなのかな、いっそ強引に休みをとってついて行こうか沖縄。
考えないわけじゃないけれど、その一方では、仕事で行く夏弥の邪魔になるだろうし、やっぱりここは我慢。
揺れる私の心は微妙で、そして、その微妙さが恋愛の醍醐味なんだけど。
これまでの恋愛では感じなかった想いが私をやけに悩ませる。
こうして、朝早くから恋人の元を訪ねる事さえ初めてだし。
『木曜日、この部屋で待ってていい?』
甘えながら言ってる自分に、自分で照れるのも初めてだ。