【完】Secret Story ‐笠井 龍輝‐
――……。
……。
その日の夕方、久々に美奈の手料理を味わい、学校のことやダチのこと、そして真由のことも話した。
直人さんは終始優しく笑っていて、美奈は目をキラキラ輝かせながら真由の話に聞き入っていて。
普段は感じない、新鮮な空気の中で俺も笑っていた。
……。
哲が寝た後、俺たちは酒を飲み始め、今度は俺の話じゃなくて、直人さんが親父の話をし始めた。
直人さんと親父は本当に仲が良かったみたいで、俺が生まれた時も、親父の隣には直人さんが居たらしい。
「あの時の先輩、病院の廊下を行ったり来たりして、凄く緊張した顔だったなぁ。
“落ち着けー、落ち着けー”って何度も言って、終いには俺の手を握り締めて“怖い、逃げたい”って震えてた」
「え、あの大和さんが!? うそぉ、信じらんない!!」
「ほんとほんと。
頑張ってるのは中に居る奥さんなのに、先輩の顔真っ青でヤバかった」
当時を思い出しながら、くつくつと笑う直人さん。
それから目を細め、酒の入ったコップを手の中でゆっくりと回す。
「お前と最後に会ったのは、お前が哲くらいの時だったかな。
俺を見たお前はさ、ガキのくせに一生懸命に優ちゃんを守ろうとしてた。
まぁ、お菓子をチラつかせたらあっという間に食いついたけどね」
「…んなもん覚えてねーよ」
「だから話してるんだよ。
いやぁ、あん時のお前はほんとに可愛かったなぁ。
まぁ、その次の年はお子ちゃま特有のイヤイヤ真っ只中で、先輩たちはずいぶん苦労してたみたいだけど」
「だから覚えてねぇっつーの」
「あはは」
凄く楽しそうな直人さんは、日本酒をクイッと飲み干し、ふっと小さく息を吐いた。