略奪愛の結末
抗がん剤 放射線 
とりあえずその治療をしながら
ガンの進行を抑えて すこしでも長く生きられるように
そういう治療法だと言う。

「ごめん 俺がもっと早く病院に行かせてれば…。」

ハンドルを握って後悔が押し寄せてきた。

「そんなことないよ。自分のことなのに私が
ちゃんとしなかったから……篤朗のせいじゃない。」


マリの胃はもう固くなり ガンが他の臓器にも転移していた。

「怖かったんだ。絶対悪いってわかってたから。
ごめんね 逃げてたから…こんなことになって……。
飛勇もいるのに…私 死んじゃうんだ…。」

「そんなこと言わないでくれよ。」

「それだけだよ。悔いが残るのは……。
後は幸せな人生だった 篤朗と一緒にいられて。」

耐えきれなくて嗚咽になった。

「俺が…しっかりしなきゃ……ウッ…なんねーのに……
ごめん…マリ……ウッ……。」

口を押えて天を仰ぐ。

「篤朗ったら……泣くのは私の仕事でしょう?」

マリの方が何倍もしっかりしている。

「幸せだったもの……残していく篤朗と飛勇のことだけ…
後は悔いのない人生だった自分はね……。
だけど…篤朗には申し訳ない……ごめん……。」

「んなこと言うな!!」

俺はマリを抱きしめた。

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