海宝堂〜海の皇女〜
村に入っていくと、所々に煙が上がっているのが見えた。
さっきの奴らは相当暴れたらしい。
怪我人も所々に倒れていた。

「酷い…」

「大丈夫、みんな生きてる、治療はみんな片付いてからよっ!」

シーファは横目で怪我人を見送りながら、足を早めた。

と、男の子の足が止まる。そーっと家の角から向こうを除くと、ばっとこっちに振り返った。

「いる!4人共、村の広場にいるよ!」

「よし、じゃ、お前はここで隠れてろ。
ニーナ、目眩まし、いけるか?」

「ダメ、この距離じゃ、一丁じゃないと当たらない。」

シーファは不思議そうにニーナの顔を見た。

「弾火は一丁の方が飛距離もあるし、精度もいい、しかしそれだと連射が出来ない。」

ガルがこっそりと教え、シーファはなるほどと、うなずいた。

「ニーナ、二丁で奴らの手前を撃て。
弾幕に紛れて近づく。」

「分かった。でも…一人は危険よ?」

「私も行く。」

シーファが手の布をぎゅっと締めた。

「…よし。でも、カニの時みたいに独断で動くのは禁止よ。」

「ごめん…もうしない。」

「シーファ、お前は右へ行け。倒さなくてもいい、とにかく一ヶ所に集めるぞ。」

「はいっ!」

「じゃ、いくぜ…3!」

ガルとシーファが足に力を込める。

「…2!」

ニーナが弾火を二丁構える。

「…1っ!」

ガルとシーファが飛び出す。

「撃てぇっ!」

弾火から無数の炎が飛び出す。

「なっ!なんだぁっ!」
「誰だっ!…げほっげほっ!」

地面に着弾した炎は破裂し、もうもうと煙を立たせる。
男達は突然の出来事に咳き込みながら、慌てた。

1人の男のうしろの煙がゆらりと揺れた。
嫌な予感に振り返ると、シーファが飛び上がっていた。

「――はぁっ!」
「―――ぐがぁっ!」

顔面に見事な飛び蹴りが炸裂し、男は吹っ飛んで動かなくなった。

「あ…やりすぎた?」

しまったと苦笑いを見せるシーファのうしろの煙が今度は揺らめいた。
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