海宝堂〜海の皇女〜
倒れた4人を一ヶ所に積み上げて、シーファはパンパンと手を叩いて埃を払った。

「よし、後は倒れてる人達の手当てをしないと…」

「おねいちゃあ〜ん!」

隠れていた男の子が両手を広げてシーファに飛び付いた。
その勢いの凄さにシーファは思わずよろめく。

「凄いっ!凄いよ、おねいちゃんっ!
あいつらに素手で勝っちゃうなんて、ほんっっっっっとに凄いよっ!」

シーファの腕の中で興奮の為、暴れるので落ちそうになるが、なんとか踏ん張った。

「おい、俺らも忘れんなよ。」

「もちろんだよ!ありがとう、おにいちゃん、おねいちゃんっ!」

男の子の笑顔に4人は照れて顔を見合わせた。

と、広場に1人の老人が駆け込んできた。

「リルト!リルト!!
おお…リルト、無事じゃったか…」

老人は男の子の姿を見て、安心したように息を吐いた。

「おお、リルトって言うのかお前。」

「うん!こっちは俺のじいちゃん。
じいちゃん!この人達があいつらをやっつけてくれたんだよ!」

リルトがシーファの腕から降りると、じいちゃんの足に抱きついて言った。

「おお…それはありがとうございます。
わしはリルタと申します。
ほれ、お前も頭を下げんか。」

リルタがリルトの頭を下げさせる。
リルトは、もう言った〜と抵抗している。

「いいえ、私達は別に…
ただ、イルカを追ってここまできたら、リルトに出会って、あとは成り行きで…」

「イルカ?はて、この辺のイルカは逃げてしまったはずですが?」

「フリップだよ!フリップがおねいちゃん達を連れてきてくれたんだ!」

「そうか、そうか…あいつは頭がいいからのう…
皆さん、…お名前をお聞きしてもよろしいですかな?」

「あ、すみません。
私はシーファです。」

「ニーナよ。」

「…ガルだ。」

「そんでもってこの俺がリュートだ!
俺達4人で『海宝堂』っていうんだ。」

「かいほうどう…?」

首をひねるリルトにリュートが説明を始めようとするとリルタが止めた。

「お話は後でゆっくり…まずは、村を救って下さったお礼を致しましょう。」

リルタはそう言うと先へと促した。
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