海宝堂〜海の皇女〜
しかし、シーファはそれに首を振った。

「いえ、それより怪我人の手当てを…」

「それなら逃げ切った村人達が治療をしております。
ご心配いただきありがとうございます。」

「それなら、そのお手伝いをさせてください。」

シーファが走り出すと、ニーナははぁ…と、ため息を漏らした。

こうと思ったら止まらない。
ニーナの懸念していた所が徐々に出てきていた。
まあ、王女であったシーファに怪我人をほっとけるはずもないし、この村の事は大いに興味があったので、ニーナ達もそれに続いた。

それぞれが村に散らばり、それぞれに村の人達の手助けをしていると、シーファの元にリルトが息を切らして走ってきた。

「シーファおねいちゃんっ!大変だよっ!
あいつらが逃げちゃったよ!」

「えっ!?縛っておくべきだったわね…」

「前に倒した奴らも一緒にいなくなって…
あいつら、アジトに帰って仲間を…」

「とにかく広場に行きましょう。」

シーファとリルトが戻るとガル達も広場に戻ってきていた。

「ガル…」

広場に集まっているのはガル達だけでなく、リルタや怪我の手当てをした村の男達も集まっていた。
その顔は不安に歪んでいる。
不安の要因はリルトと同じ、仲間を連れて戻ってくるのでは?ということだった。

「あいつら、今までは皇国のはずれで悪さをするくらいだったのに、村の中に入ってくるなんて…」

「皇国?海の中に国があるの?そこの所詳しく教えてくれる?」

やっと聞きたい事を聞けるとニーナが前に出た。

「うん、海の中はセイド王が治める一つの国なんだ。
ほとんどは魚や海の生き物が生活する普通の海なんだけど、王様の城に近いこのあたりは僕達、人魚が村を作って暮らしてるんだ。
この村はその一つで、クチミチスイ村って言うんだ。」

「へぇ〜海の中にも国があるのか…」

「それであいつらは、村に定住していないもの達の集まり、ということか?」

リルトは無言でうなずいた。
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