海宝堂〜海の皇女〜
村の人達はますます不安の表情を濃くして、ざわついた。

「あいつらは、他の村も同じように襲っているらしいし…」

「何か悪いことを企んでいるんじゃ…?」

「大丈夫じゃ、セイド王がなんとかしてくださる!」

リルタが力強くそう言うと、村人達の顔に安堵が見えた。リルタは続けて、

「城に救援を求めるバルームをやったからの、もうすぐ城の親衛隊が来てくださるはずじゃ。
ここでの事を報告して後はセイド様にお任せしよう。
みなさんの事もご紹介しなければ…」

「それはいいけどよ、それより…バルームって何だ?」

「バルーム?僕らの国の乗り物だよ。
自分で泳ぐよりずっと速いんだ。」

「へぇーっ!それ見たいっ!まだあるのか?」

「うん!じゃ、行こうよ、僕が案内するからさ!
おねいちゃん達も行こうよ!」

村の様子も落ち着いてきていたので、リルトに強引に引かれながらシーファ達はバルーム乗り場へと向かった。


シーファ達がやってきた場所と調度反対側にバルーム乗り場があった。

乗り場は海上の港と変わらず、岸に大きさの違うバルームが並んでいた。

「うお〜っ!すげぇなこれ!」

バルームは村を覆っている泡が船を覆い、濡れずに移動出来るように開発された物だ。

リュートが泡に触れると、ボヨンとその弾力で跳ね返した。

「なあ!乗ってみようぜ!いいだろ?リルト。」

「うん、僕、運転できるし。」

「へぇ〜小さいのに偉いのね。」

リルトはへへ…と鼻の下をこすると自慢気に笑った。

リルトのバルームにまずはリュートが飛び乗る、続いてシーファ、ニーナ。
そしてガルが乗り込もうとすると、リルトがそれを止めた。

「ごめん、ガルおにいちゃん。このバルームは4人乗りなんだ…」

「じゃあ、しょうがねえなぁ〜。ガルは留守番ってことで〜」

ニヤニヤといやらしい笑いを浮かべるリュートをガルは睨む。

「なんだよ…
!そんなにこれに乗りたかったのかぁ?」

「……………もういいっ、早く行ってこい。
ここで待ってる。」

むすっとしたガルの表情に笑いが堪えられないリュートとニーナだった。
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