海宝堂〜海の皇女〜
バルームはスムーズに発進し、村を覆う泡を突き抜けて進んだ。
目の前に綺麗な海が広がる。
熱帯魚達が並んで泳いだり、楽園というのはこういうものなのだろうとシーファは感動していた。
…シーファだけは…

リュートとニーナは残ったガルが見えなくなると、腹をかかえて笑いだした。

「ひー…絶対に乗りたかったんだぜ…なのに強がっちゃって…あーおかしーったらないぜぇ…」

「普段クールだから、より一層ウケる…
あーダメ…お腹いたい…」

「そんなに笑ったらダメだよ…ガルには考えがあったかもしれないのに…」

シーファが少し膨れて2人に言った。

「考え?」

「そう。
そりゃ、乗りたかったのもあるかもしれないけど、さっきの奴ら、戻ってきたりしたとき、私達3人じゃヤバくない?」

2人はそろって顔を見合わせる。

「だって、この状態で狙われたら、戦えるのはニーナだけだよ?
私は水中ではパワーもスピードも人魚には敵わないだろうし、リュートの雷流はみんな感電しちゃうでしょ?だから…」

シーファの淡々とした説明に2人の顔色がどんどんかわっていった。

「り、リルト。
もう十分だから、戻りましょ?」

「う、うん…」

ハンドルを握りながらリルトはうなずいた。

バルームはUターンしてクチミチスイ村に戻ろうとした。

キキッ!

海の中で果たしてその音がするかは置いといて、そのくらいの勢いでバルームは急にブレーキをかけた。

「どわっ!なんだよっ、急に止まりやがって…」

リルトはガクガクと震えだした。
進行方向に影が揺らめき、行く手をさえぎっていた。

「あ…ああ…」

ガルの予想は当たっていた。
影の正体は、さっきの奴らの一人と、その仲間達だ。
その数は4人どころではなく、バルームをぐるりと囲んでしまった。
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