海宝堂〜海の皇女〜
崩れた壁をどかして、ニーナはそこに立っているシルフェリアを見つめた。

(なんて速さなの…
あんな重そうな鎧をつけて、マントも動きにくそうなのに…
前のシーファでも、こんなに速くなかったし、パワーも、ガルを吹っ飛ばすほどじゃ…)


「くそっ…全く歯がたたねぇっ…」

リュートも痛む腕をさすって起き上がる。

(これが、王様が言ってた『絶大な力』ってやつか…
ちくしょう…パワーもスピードも上がって、こっちは武器使えないんじゃ、どう戦えばいいんだよ!)


ガルは瓦礫の下で地変に手を伸ばす。

(どうする?地変であの鎧を石に変えるか?
いや、鎧が無くなればますますスピードが上がるだろう…

くそ…王様達に封印の仕方を聞いとくべきだったな…

このままじゃ…最悪…)

あの悪夢を思い出す。

シーファが2人を殺して、自分までその手にかける悪夢。
あんなことにはしちゃいけない。
操られてるとはいえ、させちゃいけない。
もし、そうなったら…シーファの心は完全に壊れる。

ガルは部屋の角に倒れているセイドとアリアを見た。

まだ意識は戻っていない。

(封印の仕方が分かるまで、なんとか時間をかせぐか…)

ガルは一気に起き上がるとニーナに視線を向けた。
そして、セイド達を見る。
ニーナはそれに気付いて、こくんとうなずくと、走った。

シルフェリアがそれを見逃すはずもなく、一気にニーナとの距離をつめる。

しかし、ガルが走り出して、思いっきり体当たりをした。

「なぁっ!」

シルフェリアは不意の攻撃に、ノーガードで体当たりを受け、飛ばされ、膝をついて止まった。

「お前の相手は俺だ。」

シルフェリアはガルを睨み付けた。
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